DALI RUBICONシリーズ スベシャルレビュー

DALI RUBICONシリーズ スベシャルレビュー


こんにちは。オーディオライターの橋爪徹です。

2014年秋から各方面で記事を書かせていただいております。

突然ですが、質問です。皆さん、オーディオは好きですか?
このページにアクセスされている方は、きっと間違いなく「好き」と答えてくれると思います。では、どのくらい好きでしょうか?最高の趣味ですか?気軽に楽しむライトな嗜みですか?好きの深度は違っても、きっと1人1人の好みのサウンドがあって、それに近い環境を作りたいと思われているのではないでしょうか。

オーディオのサウンドを決定付ける大きな要素のひとつ、それは音の出口である「スピーカー」。自分に合う最高のスピーカーはどれなのか。これは、一生をかけて探し続ける終わりのない旅のようなものだと私は思います。本記事は、既にオーディオを楽しんでいる方に向けて、私が導入したRUBICONシリーズを紹介するために作成しました。

オーディオライターとしてではなく、どちらかというと、一オーディオファンとしてRUBICONを導入した体験をお話しする、そんな記事にしたいと思っています。どうか最後までお付き合いください。

『DALI RUBICONシリーズとその名の由来』

まず、RUBICONシリーズとはDALIの中でどんな位置づけのスピーカーなのでしょうか。ホームページ上では、フラグシップEPICONのひとつ下のモデルとして紹介されています。RUBICONというのは、有名なことわざ「ルビコン川を渡る」のルビコンのことです。ことわざの意味は、「ある重大な決断・行動をすることのたとえ」といわれます。もう後戻りはできないという覚悟のもと、重大な決断や行動を起こすことをいうわけです。
はて…どういうことでしょうか。オーディオとの関連性がよく分かりませんよね。
実はRUBICONという名前の由来は、開発経緯に秘密があるそうです。フラグシップEPICONでDALIが初めてスピーカーユニットを内作したのは、DALIファンの方は既にご存じかもしれません。ユニットの内作というのは、自社で妥協なく作り込める反面、非常にコストが掛かりリスクを伴います。DALIは、RUBICON開発をきっかけに今後の新製品すべてでユニットを内作することを決めたのだそうです。EPICONを発表した次のタイミングであり、それは思い切った挑戦の始まりでした。しかも、DALIならではの「購入しやすい価格帯」を維持しながらの内作を目指しました。まさに「ルビコン川を渡る」思いで開発されたモデルであることからRUBICONと名付けられた、という訳なのです。
ネーミングの由来は社内事情……ちょっと笑ってしまいますが、今となってはなかなか感慨深いエピソードだと思います。なにしろ、現在のラインナップは、エントリーのSPEKTORを除いて全て内作を実現している訳ですから。

『RUBICONのシリーズ ラインナップについて』

では、RUBICONシリーズのラインナップを見ていきましょう。ブックシェルフのRUBICON2、リボンツイーターを加えてトールボーイ型にしたRUBICON5、RUBICON5のウーハーを2つにしたRUBICON6、ウーハーを3つにしたRUBICON8、センター用のRUBICON VOKAL。壁面設置用のRUBICON LCRの全6機種になります。

※画像は左から、RUBICON2、RUBICON5、RUBICON6、RUBICON8、RUBICON/LCR、下部中央はRUBICON/VOKAL

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RUBICONシリーズの各モデルのスペックはこちら

『DALIとの出会い』

RUBICONシリーズの前世代のモデルは、MENTORでした。日本ではブックシェルフとトールボーイの2機種のラインナップでしたが、かなり長い期間販売されていたので、ご存じの方もいるでしょう。私は、MENTOR2の愛用者でした。そして、その前はTowerを使っていました。そうです、オーディオライターになる前から、私はDALIのファンだったのです。
遡ること2005年夏。私が社会人になってまだ数年目の頃、DALIとの出会いがありました。当時、ペア3万円弱のトールボーイから買い換えを考えていました。20万円未満でいいのがないか探していたとき、店員さんにTowerを紹介してもらったのがはじまりです。持ち込んだソースはオーケストラとバンドセクションの入ったゲームの主題歌でしたが、弦楽器をそれは美しい音で奏でてくれました。一発でその美音に惚れてしまい導入を決めたのを覚えています。

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    そして2013年、今度はMENTOR2に買い替えました。Towerは弦楽には最高の相性を持っていたと今でも思っていますが、当時のDALIらしい個性の強いモデルでした。対してMENTOR2は、解像感を重視し帯域的な癖も抑えた新時代を感じるモデルだったと記憶しています。長年自分のリファレンスとして使い続けることになり、仕事でハイレゾのレビューをするときも信頼できるモデルとして愛用してきました。

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    ……思わず昔話をしてしまいました。私のDALI遍歴を明かした上で、RUBICONの話に移りたかったのです。実は、白状しますと、オーディオライターになる前、初めてオーディオショップでRUBICONを聞いたときは、まったくピンと来ませんでした。「なんだ、この地味な音の新機種は?DALIはいったい誰をターゲットにこんな音の機種を出したのだ?」と感じたのを覚えています。今思えば、それこそがRUBICONの魅力だったのですが、当時の私の耳は気付けませんでした。
    2012年の秋、MENTOR2導入の少し前、私は友人の劇伴作家とハイレゾ音楽制作ユニットを立ち上げました。Beagle Kick(ビーグルキック)といいます。この活動を通じて、スタジオで生の演奏を聞き、プロの機材で音楽はどのように鳴っているのかを学ぶことが出来ました。音楽をひたすら正確に鳴らす環境、それは意外といいんじゃないかと思えてきました。私は音声専門でしたが、2006年から音響エンジニアをやっていた関係で、モニターヘッドフォンは持っていましたし、元々そっちの感性はあったのかもしれません。
    そんな感性の変化は、オーディオライター業も相まってますます加速し、後述するRUBICONのサウンドがピッタリ自分の好みに当てはまったという流れです。

『RUBICON2を購入』

そもそも私がRUBICONの導入についてD&Mのサイトに記事を書いている経緯。ちゃんと明かしておいた方がいいでしょう。私は、お仕事でDALIのスピーカーを何度かレビューしたことがあります。その取材の過程でD&Mに訪問しました。記事が公開された後、私はRUBICON2を借りてみたいとお願いしました。お借りしたデモ機を聞いてみたところ、これが本当に素晴らしい音。そのまま導入を決めました。
我が家にお迎えしたのは、RUBICON2のウォールナットです。29mmのソフトドームツイーターに165mmのウーハーユニット。リボンツイーターは省かれています。おかげで筐体をMENTOR2より小さくできて、重量も8kgと2kgも軽くなりました。

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    付属品は、マニュアルとゴム足(4つ×2セット)。拭き布はブラックのみの付属となっていますが、なぜかウォールナットにも付いていました。ロットによって違うのかもしれません。マニュアルには、ちゃんと日本語のページがあります。DALIにとって日本のマーケットがいかに重要か分かりますね。
    MENTOR2とRUBICON2の設置比較です。高さが9cm小さく、奥行きは1.5cm小さくなっています。

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    上の画像がMENTOR2  下の画像がRUBICON2

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    正面から見ても存在感はだいぶ違いますね。MENTOR2がすごく大きかったので、普通のサイズになったなという感想です。当然のように底面にも背面にもキャビネットの繋ぎ目はありません。表面の質感は優しく各部の作りも丁寧で、惚れ惚れするデザインです。個人的に、ウッドファイバーコーンの色味と質感、アルミプレートの配置のバランスなども好きなのでサランネットは付けずに使いたいところ。リボンツイーターが省かれたことで、変わった点がひとつあります。DALIは広い指向性を売りにしていることから、スピーカーは内振りよりも正面置きを推奨しています。しかし、このRUBICON2はリボンツイーターが無いため、内振りをお勧めしているそうです。

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    裏側を見ると、シングル接続のターミナルがあります。MENTOR2がバイワイヤ対応だったことを考えると少し残念です。コストを抑えるためなのでしょう。

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    バイワイヤ対応だからといって、いいスピーカーとは限りませんから、音を聴いての判断が重要です。ちなみにトールボーイタイプのRUBICON5/6/8はバイワイヤ対応となります。
    周波数特性は50Hz~26.0kHzです。MENTOR2が39Hz~34kHzだったので、上にも下にも狭くなりました。特に私が注目したのは、ローエンドです。ブックシェルフの同サイズのモデルで下が「39Hz(±3dB)」というのは珍しいと思います。だいたい、50台か低くても40Hz台です。これがMENTOR2の魅力でもあり、他の機種に買い替えなかった要因のひとつでした。余計に増強してない中低域も好みでしたから、実際の出音にも納得していたのです。RUBICON2を聞くとローエンドの高さは惜しいなと思いました。しかし、低域の解像感が格段に向上して、淀みなくタイトにしかも素早く収束する傾向が分かって「こっちがいい!」と納得しています。

『SMC磁気回路について』

RUBICONシリーズにはSMCマグネットシステムが採用されています。磁気回路のポールピースにSMCを採用していて、周りはカッパーキャップ(銅)で覆われています。これは電流による歪みや、磁気回路に起因する歪みを大幅に低減する効果があります。上位機種のEPICONは、より電気を通さない素材のアルミキャップになっているそうですが、コスト面からRUBICONは銅を採用したそうです。では、実際歪み率がどう変わるのか、下記がそのグラフです。

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    RUBICONシリーズのウーハー磁気回路の断面図

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    SMCとカッパーキャップの効用を測定した三次高調波歪低減のグラフ

    赤線・・・・一般的な鉄製のポールピースとカッパーキャップ無の磁気回路特性

    青線・・・・SMCポールピースとカッパーキャップ無の磁気回路特性

    黄線・・・・鉄製のポールピースとカッパーキャップ有りの磁気回路特性

    緑線・・・・SMポールピースとカッパーキャップ有の磁気回路特性

※特にグラフ中央の1kHz~2kHz付近の3次高調波歪(もっとも耳につく嫌な歪)が大きく低減されていることがわかります。

ウーハーにSMCが使われているなら、効果があるのは中低域でしょ?、と思う方が多いと思うのですが、実は一番効くのはグラフをご覧の通り2kHz付近。歪みの減少幅が大きい帯域では1%が0.2%まで減少しているのがお分かり頂けるでしょうか。RUBICONは、ウーハー ⇔ ソフトドームツイーター間とのクロスオーバー周波数を3kHz付近で取っています。つまりウーハーが担う帯域で最もSMCの効果が出ているんですね。数kHz付近は、歪みが大きいと耳障りになったり、音像がぼやけたりしますので、恩恵は大きいと思います。
ソフトドームツイーターは、アルミプレートにマウントされていますが、表面には黒い樹脂が円周上に取り付けられています。これはBMC樹脂だそうです。BMCは寸法精度に優れており複雑な形状でも一体成形できることが特徴。よく見ると細かな溝が切ってあります。平らなアルミプレートよりも、音の乱反射を抑えることができるそうです。

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『RUBICON2で聴いてみた!』(2チャンネル/ステレオ編)

さて、外観とスペック面から気になる所をご紹介してきましたが、そもそも私が買い替えるに至ったのは、既存のシステムへの不満もあったからでした。MENTOR2は長く愛用してきましたが、納得はしていても満足していた訳ではありません。まず高域が少し硬めで耳に付きます。DALIらしく中域がしっかり鳴ります。欲を言えばもっとフラットに鳴って欲しいところです。また、テンポの速いアニソンやハウス、激しいロックなどはもたついてしまい、ノリきれません。RUBICONでそれらが解決できるのか、気になるところです。
では、RUBICON2を防音スタジオのスタンドに設置し音を聴いてみましょう。

まずは2chから聴いてみます。エージングは、メーカーが推奨する80時間を越える200時間弱くらいは実施しました。アンプはDENONのAVR-X6300H。音源はすべてハイレゾ版を試聴しています。

ゆったりと演奏に浸れました。まず音場の透明度に驚きます。管楽器などの音圧のある楽器が鳴ったとき、天井の高さが分かってグッときました。弦楽の音は滑らかで、刺激成分が一切ありません。ローエンドはさすがにブックシェルフの限界がありますが、実際のオーケストラの帯域バランスに近いと感じました。

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H ZETTRIO 「Smile」

H ZETT M Official HomePage
1.Smile ・iTunes ・OTOTOY(ハイレゾ音源)
www.worldapart.co.jp

淀みないクリアな音像に驚きです。ピアノ打鍵音やシンバルやハイハットの音など、楽器の存在まで見えそうなリアリティです。音が減衰していくわずかな瞬間がとても写実的で生演奏ならではの魅力を確かに伝えます。ベースはもたつかず、ライブさながらの迫力をしっかり下支えしています。

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藤原さくら red 「また明日」

藤原さくら オフィシャルサイト

これはミックスが素晴らしい楽曲です。特に注目なのが、生楽器の質感と躍動感がしっかり残っていること。RUBICONは高い解像度で音像描写も抜群ですから、ミックスの良さも相まって楽曲本来の姿に迫っている気がしました。低域はタイトで淀みも無いため、スローテンポの楽曲ものっぺりした感じにならなくて好印象です。

通常のバンド編成にパーカッションとホーン隊(3管)を加えた、大所帯バンド。ライブにも足繁く通っている熱心なファンの私です。48kHz制作のインディーズ音源ではありますが、RUBICONは音数の多さに負けず、各楽器を明瞭に鳴らしてくれました。一方で、ミックスの善し悪しがMENTOR2よりも際だってしまいました。ダイナミクスの狭さや各トラックの分離の甘さ、生の質感の度合いなど。歪みが少なく、音場表現にも長けるRUBICONは楽曲の特性を正確に表現してくれます。音像がボヤけたりサウンドステージの透明度が低いと、ミックスの荒さもマスクされてしまうことがありますが、RUBICONはそれがありません。なかなか厳しい結果になりました。

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ブレンド・A ぼなぺてぃーと▽S「ぼなぺてぃーと▽S」

MUSIC | アニメ「ブレンド・S」公式サイト
「まんがタイムきららキャラット」連載中の「ブレンド・S」がアニメ化!2017年10月放送開始!
blend-s.jp

主演声優がユニットで歌うポップチューンは、最近の深夜アニメのトレンドになっています。いわゆるTHEアニソンですが、本楽曲はミックスが高い品質でまとまっていてある種のベンチマーク的存在だと思っています。シンセパートの音の粒子が非常にクリーンです。音像だけがそこにある感覚で、一切のモヤがありません。Aメロのダイナミクスや、リズムのキレがしっかりと表現されています。これはテンション上がります!ボーカルの定位も明瞭でキャラを聞き分ける楽しさも深まりそう。RUBICONはアニソンにも合います!

続いて、私が制作に関わったBeagle Kickの楽曲も聴いてみます。

ブラスが炸裂するご機嫌なファンクロック、「VOTEVOLUTION」。音数がとても多く、各パートMAX音量で常に鳴らしているような楽曲ですが、音場の混濁感は小さく抑えられています。テンポの速い楽曲なので、リズムに追いつけないことも心配しましたが、十分にイケてるサウンドでした。MENTOR2の頃は、若干ノリきれないというか、瞬発力に欠ける面があったので大きく改善したのは暁光です。

152席の音楽ホールで録音したジャズカルテット「Remenbrance」。DSD 5.6MHzで6ch一発録りを行い、アナログミキシングを経てDSD 5.6MHzで完成版を作るというプロジェクトでした。響きの余韻が実にホールらしいです。減衰していく音が濁らないということは、現場の空気感を再現する上で欠かせない要素ですね。ピアノ・ベース・ギター・ドラムと、楽器の音もよく見えますし、DSDならではの有機的な質感も確かに伝えてくれました。

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Beagle Kick Miracle『Twice the Love』

MIRACLE of _BEAGLE KICK_OFFISICAL WEB
BEAGLE KICK 公式サイト
beaglekick.com

そして、おまけとして2019年春発売を予定している2ndアルバムからリード曲の「Twice the Love」を聴いてみました。マスタリングも終わっているので、完成版を流しています。コーラスとサックス、そしてアコースティックベースとドラムがお祭り感を演出する明るいフュージョンです。このお祭りな感じを出すには、躍動感をどう表現するかに掛かっています。RUBICONは……バッチリでした!特に中低域がクリアなので、ビッグバンド調のベースやバスドラがしっかりとリズムを支えています。キーボードやシンバルの音も、とても鮮明で心地よく聞けます。スタジオのモニターで聞いたときより、若干中域が多目かなと思いましたが、そこは音楽の芯を伝える上で必要な帯域です。盛りすぎではないと思います。

『2ch/ステレオ編のまとめ』

他にも何曲か聴いてみましたが、

音像の無理な強調はないがクリアで高解像
高域や低域に癖は無く、ナチュラルな帯域バランス
中域のやや豊潤な部分と有機的な質感はDALIらしさを醸し出す。(あくまで醸す程度)

といった傾向がありましたので、自宅の音源チェック用としては十分な性能を発揮してくれたと思います。音楽制作に使えるかというとYESとは言えませんが、オーディオ向けのスピーカーで鳴らしたらどうなるかという、モデルケースには心から推薦したいです。

という感じでたいへん好印象。買い替えて良かったと思える音で納得しています。どんな楽曲を聴いてもマッチしますが、オーケストラを使ったPOPSや劇伴も相性抜群でした。アコースティック系の楽曲を聴くと特に幸せになれます。

『RUBICONのサラウンドシステムを聴いてみた!』(マルチチャンネル編)

本レビューはこれで終わってもいいのですが、せっかくD&Mさんと直接やり取りしているのだから、究極のシステムを味わってみたい、ということでシアター体験をしてきました!
お邪魔したのは川崎のD&Mビル。社内には、デノンの試聴室とマランツの試聴室があります。雑誌などでよく登場するあの大きな部屋です。こちらに私がお邪魔して、RUBICONで揃えた極上5.1chシアターを体験するという試み。なんという役得でしょうか。深く感謝です。

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    D&M本社試聴室での様子

まず、システム構成を説明しましょう。

アンプ:DENON AVC-X6500H
フロント:RUBICON6
センター:RUBICON VOKAL
サラウンド:RUBICON2
ウーハー:SUB E12F

AVアンプはRUBICONシリーズと組み合わせるには現実的な選択肢となるDENONのミドルハイエンド。11chのアンプを搭載した私の自宅にあるAVR-X6300Hの後継機です。
持ち込んだ映画のBlu-rayを何枚か視聴してみました。

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ジュラシックワールド 炎の王国

商品名:ジュラシック・ワールド/炎の王国 4K ULTRA HD+ブルーレイセット
価格:¥5,990 (税抜)
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
発売中

《大雨の中 インドラプトルが寝室に忍び込む~最後の闘いまで》

インドラプトルのうなり声に、量感のある深い低域が入っていたことに初めて気付きました!怖さが断然違います。雨やガラスの割れる音は、実に緻密でハッキリとしています。インドラプトルとブルーのバトルシーンは、両者の体重の重みが分かる臨場感。吹っ飛ばされても、吹っ飛ばされた方向にちゃんと重量のある音が鳴ってくれます。

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ザ・パシフィック

商品名:『ザ・パシフィック』

ブルーレイコンプリート・ボックス(5枚組)6,171 円+税
DVDセット(5枚組)4,980 円+税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
The Pacific © 2011 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and related service marks are the property of Home Box Office, Inc. Distributed by Warner Home Video Inc.

《ペリリュー島の戦闘。雨あられの猛攻の中、飛行場を横断するシーン》

銃弾や砂粒が思わずしゃがんで避けたくなるほどのリアルさです。砂は一粒一粒まで分かるように細かく聞こえてきますし、銃弾にはスピード感があります。

迫撃砲や爆撃は、向きの表現力がすこぶる良好。全方向がワイドレンジに鳴っているので、その場にいるという臨場感が半端ないです。ウーハーに低域を任せるシステムではこうはいきません。戦争映画だけあって、SEがとても大きいレベルで入っていますが、センターのセリフは小さくてもちゃんと聞こえるのがいいですね。音場全体に混濁が少なく、解像度も高いため、埋もれないのもあるでしょう。

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ガールズ&パンツァー オーケストラ・コンサート ~Herbst Musikfest 2015~

商品名:TVアニメ『ガールズ&パンツァー』 オーケストラ・コンサート~Herbst Musikfest 2015~
公演:2015年11月3日、よこすか芸術劇場
音楽:浜口史郎
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:栗田博文
出演:渕上 舞(西住みほ役)・ChouCho(OP主題歌アーティスト)・佐咲紗花
品番:LACA-9436 ~ LACA-9437
価格:\3,800(税抜)
レーベル:ランティス
発売・販売元:バンダイナムコアーツ
©GIRLS und PANZER Film Projekt

《クライマックスの歌唱シーン 「Glory Story」と「Enter Enter MISSION!」》

こちらは、複数のマイクで録音し5.1chミックスしたコンサートのBlu-ray。ある程度手が加えられていて、いわゆる現場の生の音場を楽しむタイプのソースではありませんが、新たな発見はありました。まずオーケストラならではの重厚感が圧倒的に違いました。私の自宅では10㎝フルレンジの限界もあって、サラウンドからはほぼ低音が出ていません。その分、ウーハーに頼る訳ですが、いかに表現力に差があるか思い知りました。フロントもRUBICON6で余裕を持って低域を出せるスピーカーだったことも影響しているようです。観客の手拍子はホールの高さ感まで分かりました。自宅では、サラウンドは耳よりも高い位置に造作で埋め込んでありますから、設置条件としては理想的です。視聴室は、スタンドに置いているので、ほぼ耳の高さでした。にも関わらず、視聴室の方がリアルでした。おそらく、部屋の広さの他、RUBICON2の解像度の高さと中低域の余裕が効いているのでしょう。新鮮な体験でした。

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ガールズ&パンツァー 最終章 第一話

商品名:ガールズ&パンツァー 最終章 第1話
Blu-ray発売中
発売・販売元:バンダイナムコアーツ
©GIRLS und PANZER Finale Projekt

《戦車を探して学園艦を探検する最中、船舶科の生徒にそど子が攫われるシーン》

このシーンはアニメらしく、かなり派手に音をサラウンドに振っています。画面はFPSのように一人称視点で狭い通路を走り、階段を昇り、滑り棒を降りて追いかけます。リアスピーカーからは
、足音など実在感のある音がこれでもかと鳴ります。中低域がしっかりとサラウンドから出ていることで、SEの説得力は大きく上がっています。滑り棒を伝って降りるシーンでは、上から武部沙織のお尻がぶつかるシーンがありますが、ちゃんと重量感があってハッとします。

《あんこうチームが橋を渡ろうとした際、BC自由学園に奇襲を受け大ピンチになるシーン》

橋のきしみや砲撃の破壊音が大音量に負けない高い解像度と、キレのあるタイトな中低域に支えられて臨場感抜群に描かれています。リアにもちゃんと中低域が入っていたのだと気付きました。橋が壊れていく過程は、あんこうチームにとって大ピンチなのですが、見ているこっちもその危機感を一緒になって味わえます。SEがリアルだと、登場人物の気持ちにもシンクロできますね。音の果たす役割、実に大きいと再認識します。

他にもいくつか視聴しましたが、総じて効果音の説得力と音の移動しているリアリティが高く、存分に映画の世界観に浸ることが出来ました。単にすべてのチャンネルを大口径のスピーカーにするだけでは味わえない、RUBICONならではの高い解像度と淀みの少ない音響空間。映画にもマッチしていると思いました。

『マルチチャンネル編の試聴を終えて』

さて、長らくお送りしました本レビューもそろそろ締めのコーナーに移りたいと思います。RUBICONシリーズは、ブックシェルフのRUBICON2でも実売20万ちょっとですから、気軽に買っていただける製品では無いと思います。このクラスの製品を購入するときはやはり「自分の今のシステムより良いと思えること」が前提になってくるでしょう。個人的には、デザインが気に入るかどうか、そして音の好みに合うかどうかがジャッジポイントと考えます。デザインについては、個別の感性にお任せするとしても、作りはとても丁寧ですから安心していただけるとかと思います。となると、あとは音です。これまで書いてきた通り、RUBICONは高い解像度と歪み感の少なさ、ナチュラルな帯域バランスと、有機的な質感が特徴のモデルです。理想は、自分の耳で聴いて判断することですが、試聴の機会が取れない方もいると思いますので、本記事はなるべく具体的なイメージが沸くように努めました。

皆さんのスピーカーライフが少しでも豊かになることを願います。ありがとうございました!

2019年4月 橋爪徹

資料協力:D&Mホールディングス