ドライバー技術

驚くべき分解能を実現する、スピーカーから発想を得た精巧なデザイン

多くのヘッドフォンに一般的に使用されるドライブ・ユニットと比べると、AudioQuestの50 mmダイナミック・ドライバーは、外見面のみならず何よりも機能と性能の面で、最先端スピーカーに用いられる高品質ドライバー・ユニットによく似ています。

入念に構成されたバイオセルロース振動板、適正なボイスコイル巻型、対応するラバーサラウンドを採用することで、耳だけでなく外見からも容易に分かる品質を実現しました。優れた低歪みと適正なピストン動作による高可動域を実現すべく設計された当社のバイオセルロース・ドライバーは、ヘッドフォンの制御された低音域、豊かな中音域、そして自然に広がる高音域に大きなプラスをもたらしています。力みのない鮮やかな音色と際立った空間演出が、意味深い、心に訴えかけるリスニング体験を創造します。

当社のヘッドフォンは、短期間の楽しみだけでなく、長く続く満足をお届けできるよう設計されています。


ピストン動作

理想的なスピーカーコーンやドライバーはピストンの機能を果たします。簡単に言うと、スピーカーコーンやドライバー振動板は空気を動かすことで音を発生させます。空気を動かすこと自体は比較的簡単です。時間と周波数を整合させるために空気移動を制御しつつ有害な音のカラレーションを防ぐには、精密な動きが必要になります。

理想的なスピーカーコーンやドライバー振動板はピストンの機能を果たします。前後に動きながらも表面は変形することなく硬く保たれ、揺れ、傾き、ぐらつきを起こすことなく、滑らかで安定した動きを生み出します。

現在最も一般的な平面磁界型ヘッドフォン、ダイナミック型ヘッドフォン、静電型ヘッドフォンに使用される一般的な非終端処理マイラー振動板ドライバー集合体とは異なり、AudioQuestヘッドンフォンのドライバーはウレタンゴム製サラウンドにより無響終端処理された超硬バイオセルロース振動板を実装することで適切なピストン動作を実現しています。


バイオセルロース振動板による無理のない鮮明な音

今日、多くのヘッドフォンにはマイラー素材の振動板が使用されています。マイラーは安価、軽量なPETプラスチック素材です。バイオセルロースは、プラスチックよりもさらに環境に優しく環境に配慮した素材であることに加えて、音質面でも大きな優位性を持つ素材です。マイラーは本質的に薄く壊れやすく、音声信号が6–10 kHzの高周波に達するにつれ音の歪みが生じます。

一方、バイオセルロースは硬質で自動的に減衰するため、周波数スペクトル全体の制御性に優れています。

AudioQuestのヘッドフォンは、音の鮮明さを錯覚させる高周波域のブーストを行いません。マイラーの音に慣れているリスナーは、初めてバイオセルロースの音を聞いたときに、マイラーの高音域の方が「鮮明」に感じるかもしれません。しかし、そのような鮮明な音は歪みから生じた直接的な結果であり、人工的に高周波域が押し上げられたものなのです。

AudioQuestのヘッドフォンは、音の鮮明さを錯覚させる高周波域のブーストを行いません。代わりに、当社のヘッドフォンは全体的に歪みを抑え、よりクリーンな周波数レスポンスを示します。聴き疲れしないリスニング経験を提供する、自然な温かみを兼ね備えた本物の音のディテールをお届けします。


ラバーサラウンド

一般的なマイラー製の一体型ドライバー振動板は、柔軟性を維持するためのサラウンドを用いず、空気を移動させ音を作り出します。この方法では、ドライバーのボイスコイルから振動が発生し、マイラー振動板を経由し外縁に伝わります。振動は露出した外縁の硬い表面にぶつかり、振動板に反射しボイスコイルに戻ります。

その工程が続くと、マイラー振動板は曲がり形を変えます。行き来する振動が衝突すると定在波が生まれ、マイラーに必ず生じるカラレーションが現れます。恐らく、ヘッドフォンや音楽の愛好家にとって最も興味や関心があるのは、この有害なカラレーションが必然的に音楽に影響を及ぼすという事実でしょう。

AudioQuestのバイオセルロース製ドライバー振動板は、対応するラバーサラウンドを備えています。しかし、AudioQuestのバイオセルロース製ドライバー振動板は、対応するラバーサラウンドを備えているため、ピストン動作と無響終端が可能です。ボイスコイルの動きに合わせて振動板が悪影響を与えず共鳴して動くことで、慎重に制御された振動が発生し、それが振動板を経由してサラウンドに伝わります。

硬い表面に振動が衝突し振動板に戻ることで共鳴による音歪みが発生するのではなく、振動がサラウンドに吸収されて熱に変化するので、音楽に不自然なカラレーションが起こるのを防ぎます。これはスピーカーで実績のあるテクニックなのですが、実際にヘッドフォンで使用されることは滅多にありません。


特許取得済みのSplit-Gapモーター:歪みよ、さようなら

AudioQuestのヘッドフォンは、他の製品と比べて電気を音に変換する機能に長けています。 AudioQuestの特許取得済みSplit-Gap(途中に切り込みが入っている)モーターは、相互変調歪みを劇的に減らす設計で、時間領域での実に驚くべき分解能を持つ、クリアでくっきりとした広帯域応答と、奥行きのある自然な詳細を表現した空間を実現しています。これは確かに賞賛すべき目を見張る機能ではありますが、単に音の特性を述べているにすぎません。音楽にとって、音色の明暗とは、より明確で声と楽器の間の相互作用が理解しやすく、音の間の静寂に深みがあり感動的なものであるべきです。音楽そのものが明瞭で、意味深く、意図的で、分かりやすく、味わいやすく、楽しめるものであるために。つまり、もしかすると、皆さんは当社ヘッドフォンを通してこれまで以上に深いリスニングを体験することになるかもしれません。とりわけ、上に述べた静寂に圧倒されるかもしれません。

では、当社Split-Gapモーターはどう機能するのでしょうか。

他のダイナミック型ヘッドフォンでは、ドライバーモーターにより磁界が発生し、ボイスコイルと振動板はそれぞれの作動境界の最大値に近づくにつれ急速に制御を失います。歪みの発生です。

しかし、当社のボイスコイルはギャップ(切り込み)を挟んだ2つの磁界の間を通っているので、ボイスコイルの先端まで強力な磁界強度が集中します。その結果、ボイスコイルをより強固に固定することができ、振動板の動きを最小・最大可動域でも制御することができます。

磁界ギャップにより動きを正確に保つモーターと、適切なピストン動作を実現する振動板アセンブリにより、AudioQuestのヘッドフォンは効率的かつ正確に電気を音に変換する機能に長けているのです。歪みよ、さようなら。

50回以上設計を繰り返しながら着実に進化し続けている当社ヘッドフォンのドライバーモーターは、唯一正確に磁気回路をアルゴリズム的に微調整し最適化することができる、最先端の有限要素解析ソフトウェアを用いて開発されました。


ボイスコイルの巻型:精密な設計、対称な動き、美しいサウンド

一般的なヘッドフォンドライバーでは、ボイスコイルと呼ばれるワイヤーコイルがマイラー振動板に直接巻きついていて、永久磁石を囲む隙間に置かれています。ボイスコイルに電流が流れると、永久磁石の磁界とそれに相互作業する磁界が発生し、力が生まれ、それにより振動板が振動して音を再生します。

しかし、適切なボイスコイル巻型、すなわちボビンがないと、不適切なサイズ、不規則な形や動作による影響が出やすくなります。マイラー振動板が曲がるとボイスコイルが変形するのですが、これによりヘッドフォンがクリーンでクリアな音を作る能力に悪影響を与えることが証明されています。完全に円形でなないボイスコイルは、振動板の動きを効果的に制御することができません。もうすでにお分かりのように、振動板の動きをうまく制御できないことは、歪みを生じさせる大きな原因になります。

また、巻型がないと、設計上、ボイスコイルの高さを制御できなくなり、磁界ギャップ内でセンタリングさせることができません。巻型がない場合は長いコイルを用いなければならないので、その結果質量が増えてしまい、高周波を正確に再生する能力に支障をきたす可能性があります。

当社のヘッドフォンは、比較的薄く、軽量なボイルコイルを使用しています。少なめのワイヤーコイルを、低重量と剛度の組み合わせを考慮して選択した、ボイスコイルの形を保持するのに最適なクラフト紙の小さなシリンダーに注意深く巻き付けることで、不都合な屈曲を防ぎながら生産性の高い動きを可能にしました。さらに、ボイスコイルを巻型の限られた特定の位置、具体的には磁界ギャップ中央のゼロ静止点に位置するよう正確に巻き付けることで、ほとんど歪みのない状態を作るのに必要となる理想的な対称性のある動作が生まれます。

ボイスコイル設計を正確に制御することで、動作の対称性が増し、歪みが低減し、より自然で美しい音が生まれます。

低インダクタンス:自由で気軽に

電子工学では、ボイスコイルのようなワイヤーコイルはインダクタとして知られています。インダクタンスという用語は、インダクタの電気特性、磁気特性を説明する際に用いられます。上に述べたとおり、インダクタに電流が流れると磁界が発生します。また、インピーダンス、すなわち交流電流(AC)の流れに対する抵抗は、周波数が上がるにつれて上昇します。そのため、高周波と比べると低周波はより早く伝わります。重要なのは、コイルに巻き付いているワイヤーが多いほどインダクタンスが高くなり、コイルを通るACに対する抵抗が大きくなります。

ボイスコイルが磁界ギャップを進むにつれ、ボイスコイルのインダクタンスが音声信号の周波数と共に変化します。インダクタンスが増加すると、ヘッドフォンの音全体に与える影響も増大し、高周波が切り捨てられ、周波数に依存した歪みが生じます。これは良くないことです。

一方、インダクタンスが低いと歪みが低減します。これは言うまでもなく、良いことです。

当社のヘッドフォンでは、ボイスコイルのインダクタンスを最小限に抑え、音全体への影響を小さくし、歪みが生じる機会を減らしました。もう邪魔はされません。より自由に、より気軽に音楽を楽しんでください。


低くフラットなインピーダンス:限りなく、ゆるぎなく

私たちにとって、音楽を楽しむにあたり境界や限界、障害がまったくないことが理想です。これについては、いくら強調してもし過ぎることはありません。

それゆえ、インピーダンスについて説明したいのです。

インピーダンスは、その用語自体が示唆するとおり、制限をするものです。ヘッドフォンのインピーダンスが高くなると、アンプやソースデバイスとの互換性や扱いやすさが低下します。また、インピーダンスは音声帯域全体でひどいムラを生じさせることが多々あります。例えば、低周波でインピーダンスが高くなり、中音域で落下し、高周波で再び高くなるなど、ヘッドフォン自体の周波数レスポンスが、関連するソースコンポーネントによって異なるのです。言い換えると、ヘッドフォンのインピーダンスがフラットでない場合、繋がっているアンプに対してヘッドフォンの感度が高くなってしまい、アンプによる音の偏りの影響を受けやすくなります。

つまり、音楽を楽しめる度合いにばらつきが生じうるのです。

そこで、AudioQuestは多くの人々に可能な限りの音楽を楽しんでもらいたいと考えました。いつでも、どこでも、お気に入りのオーディオ機器で。そのような思いがあり、当社が幅広い製品に互換性を持つ低インピーダンスのヘッドフォンを設計することは必然なことでした。

加えて、低インダクタンス、磁界ギャップによる対称性ある動作、当社サラウンド設計の巧妙さなど前述の数々の要素により、当社のヘッドフォンは並外れてフラットなインピーダンスカーブを描くに至りました。これは、レスポンスが周波によって変化しないことを意味します。努力の甲斐がありました。

当社のヘッドフォンは専用のヘッドフォンアンプ(チューブまたはソリッドステート)と相性が良いですが、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、人気上昇中のハイレゾ・ポータブル・オーディオ機器、そしてもちろん当社のDragonFlyとの互換性も優れています。

それこそが、限りなく、ゆるぎない楽しみなのです。


層流エアフロー:曲線に追跡線を採用

ヘッドフォンのドライバー振動板が前後に動くと、前後に空気が押し出されます。するとその空気は他の場所に移動しなければならないので、周囲のドライバー・バスケットには空気孔が設けられています。空気孔がなければ密閉状態から空気圧が上がり、逃げられない空気はバネのように作用し振動板を前に押し出します。次に、振動板が後ろに戻る動きに耐えるときに500 Hz以下の周波数が生じます。前後の動きは次第に非対称になり、歪みを生じさせ、低音レスポンスを低下させます。

これが歪みと共鳴を引き起こすもう一つの原因なのです。

多くのヘッドフォンのドライバー・バスケットとは異なり、当社のバスケットは空気孔を均等に配置するスマート設計を採用し、ボイスコイルが極端に揺れるのを防いでいます。結果として生じる歪みがないため、低周波を制御しやすくなり、より自然な効果と伸びのある、クリーンでクリアな音を聞くことができます。

AudioQuestのヘッドフォンは、美しく、少しミステリアスで非常に便利な追跡線を用いて、エアフローを最適化しています。

空気は常に抵抗が一番少ない場所を通りますが、その通り道は追跡線を用いて定義することができます。空気孔の断面図を調べてみると曲線そのものが明らかになります。当社は、縁が尖っている空気孔に無理に空気を通すのではなく、空気が自然に流れるようにしました。これは乱流を減らすために空気力学で長く用いられている技術ですが、不快な高周波に対処するためにヘッドフォンに用いたのは当社が初めてです。(参考までに、現在特許出願中です)。

かくして、AudioQuestのヘッドフォンは、最も重要となるエアフローが層流、つまり当社製品の高周波音のように滑らかで自然な流れになるよう、乱流をスマートに最小化することに成功しました。